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バンコク 豪遊のちワンルーム

2014年01月21日

 長野県建設業厚生年金基金の資金24億円が不明になっている事件で、長野県警が指名手配していた男がタイの首都バンコクで逮捕された。容疑は不法滞在。3年間近くバンコクにいたという。

 有罪が確定していないため、男が横領したと決め付けることはできないが、仮にそうだとしたら相当な額を持っていることが予想され、「華美な暮らしだったのだろうか」と考えながら、潜伏先のアパートに向かった。

 予想は外れた。くたびれかけたアパートのワンルーム。猛暑のバンコクにあってエアコンはなく、扇風機だけ。簡素な部屋の片隅にホットプレートがあった。ほぼ毎食、自室で済ませ、着古した身なりだったようだ。タイに来てしばらくは金回りが良かったようだがここ1年は困窮していた様子がうかがえた。

 逮捕当日、近所のスーパーで購入したのはレトルト食品。そのほとんどは日本からの輸入品だった。ベッドの上には日本の小説が数冊置かれていた。50代半ばの男は望郷の念を抱きつつ、身を隠していたのだろうか。

 男には厳しい現実が待ち受けている。でも逃亡生活に終止符を打ち、祖国に帰れることにほっとしている面もあるのではないだろうか。同じバンコクの空気を吸っていた男の気持ちを、推し量らざるを得なかった。

(寺岡秀樹)

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