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トビリシ 改心した「市民の敵」

2014年01月22日

 旧ソ連グルジアの新政権が今月中旬から始動した。10月末の大統領選取材で訪れた首都トビリシでは、強権的なサーカシビリ大統領が政治の舞台から退場することを、「せいせいする」と話す市民が大多数だった。

 改正憲法発効で、大統領に代わって最高権力者となる首相に、昨年10月の議会選の結果、反サーカシビリ派のイワニシビリ氏が就任。今回の大統領選では、サーカシビリ氏が後継に推した候補が敗れ、完全に力を失った。

 「イワニシビリ氏就任後の1年で何が変わったか」。中心地の広場で尋ねると、「警察の対応」と話す市民が多く、少し驚いた。「親切になった」「違反のもみ消しに金をせびらなくなった」などの答えが相次いだ。無職イウザさん(78)は、2009年5月の首都での反政権デモを振り返り、「警察は教会に逃げ込んだ参加者にも暴行した。死亡者を隠すため、商店の屋根に運び上げて放置した。警察は市民の敵だった」と話した。

 サーカシビリ政権の約10年間は、経済政策で一定の評価がある一方、反政権派の市民を多数、政治犯として投獄もした。政権の手先となって現場で市民を締め付けたのは、警察などの治安当局だ。せっかくの市民の好印象が将来、再び変わらなければいいが、と思いながら、トビリシを後にした。 (原誠司)