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ソウル 人と食味わい尽くす

2014年02月04日

 韓国風おでんや、お好み焼きなどから湯気が立ち、吐く息と白く重なる。ソウルは11月上旬から氷点下の寒さになった。でも街のあちこちにある屋台は客が減らない。

 客は酒を飲み、隣と体を寄せ合えば防寒できる。頭が下がるのは、たいていは40歳以上の女性主人の勤勉さだ。アーケードにある屋台の自称60歳の女性主人は前よりも太って見えた。「たくさん服を着て、食べるのが1番の寒さ対策なのよ」と冗談めかした。屋台を出して20年以上。「息子を育てる家計の足しにと始めたの」と言うが、子育ては終わったはずだ。昼から午前0時すぎまで働き通しの屋台が生きがいなのだろう。

 初雪の日。アーケードのすき間から雪が舞い込んだ。彼女は「きれいだねえ」と見上げながら、客に出した旬の焼きハタハタを食べやすくハサミで切る手を休めなかった。

 数カ月前、韓国中部・大田(テジョン)の駅前で入った屋台では驚くべきことが起きた。1台の車が屋台街に白い霧を噴射しながら通りすぎたのだ。視界ゼロとなり、テーブルの上の砂肝にも降り注いだ。

 70代の女性主人は「消毒薬さ。人体に影響はないって。平気、平気」。この、おおらかさもつまみになった。韓国の魅力は人と食。雪も消毒薬も降る屋台は両方を味わえるからいい。 (辻渕智之)

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