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オルモック 被災地の人の心遣い

2014年02月17日

 フィリピン中部を直撃した台風30号の被害を受けたレイテ島のオルモックを訪れた。そこで出会ったのは、被災しながらも他人を思いやる現地の人の心のありようだった。

 被災し、セブ島へ逃れる人たちの長蛇の列ができた船乗り場。ほぼ1日がかりで待ったが、その日の乗船券は入手できなかった。町へ戻ったが、予期せず開いていたホテルは満室。助手と2人で思案中、ホテルの女性幹部が事情を察したのか、「相部屋だが、簡易ベッドを入れたから」と言い、エアコン付きの多目的室を案内してくれた。女性は災害の寄付金名目でようやく薄謝を受け取った。

 翌朝、あらためて船乗り場へ。乗船券を購入するには整理券が必要。せっかく持っていても整理券の番号が呼ばれたのに気付かない人が多い。当人以外はその分早く順番が回ってくるため、都合がいいはず。心や体の疲れで気が立っている人も多いだろうから、なおさらだと思った。でも違った。呼び出された番号が後ろの人にも聞こえるよう何人もが大声を張り上げていた。持ち主がいると、伝言ゲームのように「待て」「後ろにいるぞ」などと窓口の担当者まで届け、率先して道をあけていた。

 被災状況だけでなく、フィリピンの人たちのこのような姿も知られていい、と思った。 (寺岡秀樹)