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ダラス スナイパーのひと言

2014年03月18日

 ジョン・F・ケネディ米大統領暗殺の実行犯は、リー・ハーベイ・オズワルド容疑者ただ1人だ-。南部テキサス州ダラスの現場を訪れる前、暗殺の映像を最新技術で解析したテレビ番組を見て、そう確信していた。

 暗殺現場は50年後の今も車が行き交う道路だ。オズワルド容疑者がライフルを発射したとされる7階建てビルの6階の窓から道路を見下ろした。一発目が命中した地点は約60メートル、2発目は約80メートル先だ。相当の腕が必要だが、狙撃は不可能ではないと納得した。

 翌日、別の取材に訪れたダラス郊外の射撃練習場で出会った元海兵隊のスナイパー、マシュー・メルトンさん(34)に「JFK狙撃は難しかったのか」と聞いてみた。答えは「距離的には、それほど難しい狙撃ではない」。ほら、やっぱり。

 メルトンさんは続けた。「だが、オズワルド独りにはできなかったはずだ」。理由の1つは、海兵隊にいた当時、オズワルドの射撃の力量は1級射手ギリギリ程度だった。加えて「組織的な支援がなければ、世界で最強の男を狙う精神的なプレッシャーは並大抵ではないからだ」という。

 数々の実戦の修羅場をくぐり抜けてきたであろう元スナイパーの見立てに、にわかJFKマニアの先入観は崩れた。こうして陰謀説はいつまでも続いていく。 (竹内洋一)