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トルファン 消えてしまった笑顔

2014年03月14日

 中国新疆ウイグル自治区の東部にあるトルファンは、シルクロードのオアシス都市だ。周囲の高峰からの雪解け水が地下水となり、カレーズと呼ばれる水路を巡る。夏は昼間の気温が40度を超えるが、夜になると肌寒くなる。豊かな水と寒暖差が、特産のブドウをぐっと甘くする。

 学生時代、一人旅で訪れたトルファン郊外を歩いていて、思いがけずウイグル族の家庭に招き入れられたことがあった。家の屋根では、ブドウを敷き詰めて乾燥させていた。一家の長とみられる男性は、その干しぶどう一握りと、お茶でもてなしてくれた。言葉はほとんど通じなかったが、男性がずっと笑顔だったのが強く印象に残った。屋台街や市場でも、みんな人懐っこかった。

 20年近くがたち、再び訪れた街は、張り詰めた空気だった。ウイグル自治区では民族や宗教を軽視した抑圧策が強まり、不満を持った者による暴動やテロ事件が起きている。不満分子や独立活動について当局に通報すれば報償金がもらえる密告制度があり、住民たちは疑心暗鬼になっている。

 市場で話を聞こうとしたが、話し掛けると困ったような表情を浮かべ、多くは目を合わさずに立ち去った。かつてのおおらかな雰囲気が戻ることは、もうないのだろうか。 (今村太郎)

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