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ソウル 生き字引の重い遺言

2014年03月26日

 車いすの男性が、韓国国会を訪れた。サングラス姿のため、眼光の鋭さまでは分からなかったが、集会での40分の熱弁は健在を十分にアピールした。

 金泳三(キムヨンサム)、故・金大中(キムデジュン)の両元大統領とともに「三金」と呼ばれた金鍾泌(キムジョンピル)元首相(88)。自身の偉業を後世に伝える団体の設立総会でのことだ。2004年に政界を引退。08年に脳卒中で倒れて以降は公の場にほとんど姿を見せなかった。

 「今でも目を閉じると、国のために東奔西走した朴大統領の姿が浮かぶ」。ナンバー2として朴正熙(パクチョンヒ)政権を支えた鍾泌氏は「漢江(ハンガン)の奇跡」と呼ばれた経済成長を実現させた当時のトップの功績を繰り返した。

 話が長引くうち、出席議員らが顔を見合わせ始めたが、気にしない。話題は日韓国交正常化交渉からベトナム戦争への韓国軍派兵の舞台裏まで及んだ。

 「振り返ると後悔ばかりだ。あとは死を待つだけ。私は国立墓地には行かず、兄弟たちの待つ故郷の墓で眠りたい」。韓国政界の「キングメーカー」と呼ばれ、国会議員を憲政史上最多の九期務めた重鎮。40分の演説は、現役世代への「遺言」のようだった。 (中村清)

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