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ドミニカ共和国・プエルトプラタ 言葉を超えたコトバ 

2014年04月11日

 エディさんは耳が聞こえない。話すこともできない。口から出てくるのは「ア、ア」という音だけだ。中米ドミニカ共和国のプエルトプラタで、海のガイドをしている。

 彼は、おしゃべりだ。往復の車の中で、沖合に出る船の中で、休むことなくおしゃべりを続ける。通り過ぎる風景の説明をして、合間にジョークを挟む。沖合に出れば、安全な浮かび方、泳ぎ方を教えてくれる。もちろん、言葉はない。身ぶり手ぶりと表情の動きがすべてだ。

 だが、彼の言わんとすることは、伝わる。指示に従って海に入り、泳ぐ。意思の疎通に支障を来せば危険もあるが、不安はない。口から出る言葉はなくても、彼の指示が明確に伝わってくるからだ。長年にわたって試行錯誤を重ねながら仕事を続け、意思を伝達する技術に磨きをかけたのだろう。

 もし、エディさんが話せたとしたら、現地の言葉が分からない私と彼の間に理解し合える共通の言語はない。ならば、彼の指示にうなずき、ジョークに笑うことができたのは、彼が言葉を話さなかったからかもしれない。言葉が常に最上の道具だとは限らない。 (吉枝道生)

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