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パリ エリゼ宮に地の利?

2014年04月21日

 見上げれば、天井画の中で天使たちが舞っている。周りを隙間なく埋める彫刻、装飾の数々。壁のゴブラン織りや緑色の大理石の柱が、シャンデリアの数百灯に照らされていた。フランス大統領府エリゼ宮を訪れるたびに、過剰なほどの華々しさに圧倒される。

 18世紀初頭、貴族の館として建てられた。大革命後は皇帝ナポレオン一世、ナポレオン三世も住んだという。歴史的いわれは尽きない。現在は重要な国際会議、会談の場にもなる。厳粛かつきらびやかな空間の威圧感が多少なりとも交渉相手をのみ込んできたとすれば、過剰さは無駄どころか国益だろう。常に地元ファンで埋まる競技場を持つチームのようなものだ。

 「私的な事柄は答えない」。大広間で開かれた記者会見で、女優との交際問題を問い詰められたオランド大統領は苦しい答えを重ねた。歴史的不人気の大統領には厳しい時間が続いたが、なんとか押し切った。地の利があったかどうかは不明ながら、終盤に見せた穏やかな表情は、劣勢と予想された試合をホームでドローに持ち込んで、ほっとしている選手のように見えた。 (野村悦芳)