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チュニジア・シディブジド 革命の震源地は沈む

2014年04月17日

 広大な荒れ地の一角に、石造りの質素な墓が数十は並んでいた。ムハンマド・ブアジジさんが眠る墓をようやく見つけると「殉教者」と記してあった。

 チュニジア中部シディブジドの郊外。中東を揺るがす「アラブの春」は、この町の貧しい野菜売りブアジジさん=当時(26)=の焼身自殺から始まった。

 2010年12月、ブアジジさんは路上で野菜を売っていた際、許可を得ていないとして女性取締官に平手打ちされたという。抗議の自殺は民衆の怒りに火を付ける。強権支配へのデモとなり周辺各国に拡大。独裁体制の崩壊や内戦に発展した。

 あの時、平手打ちがなかったら歴史は変わったかもしれない。情勢変化が目まぐるしい中東で、「もし」に思いを巡らすのは無駄だが、考えてしまう。

 希望に満ちた「革命」の震源地となった町は3年後、沈んでいた。失業や物価上昇、治安の悪化…。食肉店の女性店員は「混乱が起きただけよ。思い出したくない」と顔をしかめた。

 荷車で野菜を運んだブアジジさんの夢は、車の購入だった。中東じゅうで暮らす、同じような境遇の青年たちには、はるかに遠い夢のままだ。 (今村実)

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