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ベルリン 写真から伝わる感情

2014年05月04日

 1969~74年に旧西独の首相を務めた故ウィリー・ブラント氏は「絵になる男」だ。昨年12月18日の生誕100年を記念し、ベルリンで開かれた回顧写真展を見ながらそう思った。白黒ばかり130点余り。洗いざらしのシャツでマンダリンを抱えたショットや、食堂列車で通路を挟んだ女性と視線を合わせた瞬間のスナップは秀逸。気さくな人柄が伝わってくる。

 ブラント氏の最も有名な1枚は、70年12月にワルシャワのユダヤ人居住区跡の慰霊碑でひざまずき、こうべを垂れた写真だろう。写真展では通常のプリントではなく、ネガを印画紙に密着させる「ベタ焼き」で前後のコマも含めて作品にしていた。「誰でも知ってる写真だから趣向を変えた」と係員。それほど周辺国に許しと和解を求めてきた戦後ドイツの歩みを象徴する写真なのだ。

 ところで、慰霊碑の前でひざまずいたのはアドリブだった。被害者に寄り添う彼の率直な感情の発露だと思うが、瞬時の演技が後世のドイツにもたらした利益は大きい。彼は、謝罪は相手に伝わってこそ意味があるということを、よく理解していたに違いない。 (宮本隆彦)

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