2014年04月27日
モスクワ北部にある「全ロシア博覧センター」を訪れた。旧ソ連時代には「国民経済達成博覧会」と呼ばれ、広大な敷地に立つパビリオンで社会主義体制の優位を誇示していた施設だ。
ソ連崩壊から間もない1993年秋に訪問した時には、宇宙開発の成果を展示する宇宙館が新車の展示即売場になっていた。
人類で初めて宇宙へと旅立った英雄・ガガーリン少佐の巨大な肖像写真が、ぴかぴかの米国車を見下ろしていた。その光景は、冷戦をへて米国に屈した旧ソ連の哀切を何よりも物語っていた。
それから20年。宇宙館は半分ほどを園芸用品店が占め、残りはがら空き。原油高の恩恵で大国として復活した今のロシアにとって、辛気くさい旧ソ連の遺物は利用価値がないのだろう。
ただ驚いたことに少佐の肖像写真はまだあった。激動の20年を見つめた英雄の心中に思いをはせて写真を撮っていると、若い警備員が「写真はダメ」だと言う。
なんとソ連的な対応か。なかなか変わらないものもあるようだ。
(宮本隆彦)