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北京 6年「やっと会えた」

2014年05月24日

 「やっと会えましたね」。天津市出身の鄭明芳さん(49)が笑みを浮かべた。彼女は経営していた会社を地元政府に強引に取り壊されたとして訴え続ける陳情者の1人。会う約束は2008年にしていた。

 前回赴任時に陳情者の取材をしていた際に彼女と知り合ったが、会う約束をした日の直前、彼女は公安当局に拘束され、2年間の「労働教養」処分を受けた。労働教養は司法手続きなしで長期間拘禁できる行政処分で、昨年違法として廃止されたが、陳情者などを弾圧する手段として長く使われてきた。

 鄭さんによると、拘束や処分理由は何も告げられず、弁護士を呼ぶことも認められなかった。処分期間が終わった後も、天津市郊外の自宅で軟禁状態に置かれ、今年に入り知人らの助けでやっと脱出することができたという。北京市郊外のマンションに隠れ住む鄭さんは「この実情を日本政府も知ってほしい」と、自身の境遇や中国共産党政権への不満を訴えた。

 中国の陳情者を取材すると理不尽な話ばかりだ。話を聞くだけで6年もかかるというところにその絶望的な状況が象徴されている。 (新貝憲弘)