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ロンドン 母国の行く末案じて

2014年05月31日

 ノーベル経済学賞の受賞者を多数輩出するロンドン経済大に、トヨタ自動車とサントリーの名を冠した研究所がある。設立したのは、同大教授だった森嶋通夫氏(故人)。日本から資金を集めた逸話を伺おうと、妻瑶子さんにロンドンでお会いする機会があった。

 話題はいつしか、安倍首相のナショナリズムに。「東条(英機)さんが祭られているところに(首相が)参拝するなんて腹が立つ。安倍さんは『戦争は勝つまでやる、負けたら一億玉砕』と言われて戦った国民の気持ちが分かっていない。日本人は怒らないからね」。言葉が止まらない。

 敗戦は15歳で迎えたという。「日本は原爆を落とされ、神戸の私の家は全焼。交渉で戦争をやめるという発想がなかったのよ」「最近の日本が心配でならない人が周りにいっぱいいる。日本がまた世界の孤児になったら大変よ」

 生前「アジア諸国から侵略のイメージを持たれずに共存できるアジア共同体をつくるべきだ」と語っていた森嶋氏。84歳とは思えないかくしゃくとした妻の言葉は、聞こえただろうか。(石川保典)

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