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ソウル 意外に危険な忘れ物

2014年06月04日

 平日の夕方、テレビが緊急ニュースを伝えた。「ソウル市内の地下鉄駅で爆発物らしきものを発見」との一報。場所を確認すると、数日前に娘とバスで通った住宅街の一角だった。

 持ち主不明のかばんが地下鉄のホームに放置されていたため、警察の爆発物処理班が出動。エックス線で検査したところ、内部に爆発物の信管の一部である太い電線や電子基板のようなものが見えたという。

 北朝鮮の挑発行為はたびたびあるが、ソウル市内で爆弾テロへの不安を感じることはほとんどない。日々の暮らしでの安心感は、赴任前に住んでいた名古屋と変わらないため「ソウルでもテロ発生か」と身構えた。

 取材の準備を始めた直後、「爆発物ではなかった」との続報が流れた。警察がかばんを開けてみたら、中から出てきたのは大量の衣類。ハンガーの針金の曲がった部分や衣類のボタン、チャックなどが信管の一部に見えたのだとか。

 かばんの持ち主は、防犯カメラの映像などから60代の男性と判明した。単に置き忘れただけだったというが、爆弾騒ぎに一番驚いたのは本人だったかもしれない。(中村清)