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ヤルタ 一筋縄でいかぬ現実

2014年06月10日

 ロシアへの併合を問う3月16日の住民投票を前にしたウクライナ南部クリミア半島のヤルタで、ソチ冬季五輪のウクライナ公式ユニホームばかりを並べたスポーツ用品店を見つけた。

 ロシア人の多いこの地、誰が買うのかとウクライナ人店員エレーナさん(28)に聞くと「テレビで五輪を見てデザインを気に入ったロシア人が買っていく」と意外な答え。

 店は首都キエフに本部があるチェーン店。併合となれば閉鎖され、失業するかもしれないという。ならば併合に反対かというと「ロシアと一緒になった方が経済面でプラスだから賛成」と、また予想外の返事。

 親はウクライナ西部出身で、自身も「ウクライナ文化に親しんできた」と強調するが、家庭ではロシア語で育ったという彼女。「クリミアを守ると約束してくれた」とロシアのプーチン大統領を支持していた。

 キエフでの流血に始まり、ヤヌコビッチ政権の崩壊、ロシア軍のクリミア掌握、そして併合と続いた1カ月。想定を超えるスピードで展開する事象を追い続けた。彼女との問答も一筋縄ではいかないクリミアの現実を表している。 (宮本隆彦)