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フィンランド・ウツヨキ 心身とろけた温冷浴

2014年06月20日

 フィンランド最北端のウツヨキ。3月上旬に訪れた北極圏の小さな村の1軒だけのホテルは営業していなかった。代わりに宿泊したのは大学の研究施設。敷地内にサウナのコテージがあった。

 眼前はいてついた湖。管理人が「穴を開けようと思ったが、厚さが50センチもあって歯が立たなかった」と明かした。穴を開けるのは、サウナで火照った体をクールダウンするため。極寒の湖に飛び込むのだ。穴が開かないと聞いてほっとしたものの、代わりに雪中へのダイブをしきりに勧められた。

 ストーブで薪をたき、熱した石にひしゃくで水をかける本場のサウナ。専用の蜂蜜を塗った肌を、じゅわーと上がる蒸気に委ねる。頃合いを見計らって素っ裸で飛び出し、ままよと雪原に身を預けた。冷えた体を再び温めると、収縮した血管がじわりと拡張していく。この恍惚(こうこつ)のひとときが温冷浴の魅力だ。

 湖畔にサウナを持ち、夏でも冬でも飛び込むフィンランドの人たちは、サウナでパーティーをしたり、果ては商談までするという。サウナは人の垣根を取り外す不思議な空間でもあるらしい。 (石川保典)