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米ホームズ 馬車を見れば分かる

2014年06月24日

 現代文明を嫌い、昔ながらの生活様式を守るキリスト教の一派「アーミッシュ」を、米オハイオ州ホームズ郡に訪ねた。彼らはいくつかのグループに分かれている。その違いは「馬車を見れば、分かる」という。

 そう教えてくれたシェトラーさん(58)の馬車は最新型。「後ろに扉が付いていて荷物を積むのも簡単」と自慢する。後ろには三角形の反射板がオレンジ色に輝く。法律で設置が義務付けられているのだ。ヘッドライトやテールライト、それにハンドブレーキやウインカーまで付いている。家に電気を引いていないのに、馬車にはバッテリーを積む。事故防止のためだ。

 だが、そうした装備を拒否する一派がいる。「見て、あの馬車」。反射板もライトも一切ない真っ黒な馬車だ。少しずつ文明を取り入れている主流派とは違い、彼らは頑固な保守派だ。交通法規に反しているが、警察の警告など気にも留めない。

 「危険だ」と批判されるが、馬車が事故を起こすことはまずない。本当に危険なのは、ずっと後になって発明されたのに、わが物顔で村の中を走り回り、馬車にぶつかってくる自動車なのだ。(吉枝道生)