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モスクワ 暮らし軽視 昔も今も

2014年07月07日

 ロシアでは生活に身近な設備やサービスの質があまり良くない。先日モスクワ郊外の小都市を訪れた。駅の陸橋はぼろぼろで崩壊寸前、駅から乗ったバスが道路の穴を避けて縫うように走る場面もあった。

 医療水準も高くない。普通の人が一番恐れるのは「病気になること」とモスクワ在住の知人女性(61)は言う。2012年に5歳未満児死亡率は出生1000人当たり10人でスリランカやコスタリカと同じ。平均寿命は68歳でラオスやブータンなど途上国並みだ。ロケットを飛ばす科学技術と国力があるのに、市民生活の向上はおろそかにされている。

 宇宙部門での成功は米国と張り合った旧ソ連時代、民生部門を犠牲にしてカネを注ぎ込んだ名残でもあるが、今のロシアでも同じことが繰り返されていると知人女性は言う。

 今年2月、プーチン大統領は国家の威信をかけてソチ五輪を催した。費用は五輪史上最高の約5兆円。「五輪で暮らしは良くならない。それだけのお金があるなら、なぜ病院や学校を良くするために使わないのか」と言って彼女は続けた。

 「この国は昔と何も変わっていないのよ」(宮本隆彦)