2014年07月18日

　ベトナムの首都ハノイで反中デモを取材した後、中越国境を越えて中国側の憑祥（ひょうしょう）に戻る時、バックパッカー風の中国人男性と出会った。同時期にハノイに滞在していたとのことで、話が弾んだ。

　ベトナムで貨物車を売る仕事をしており、これまでもよく中越国境を行き来してきたという。今回は、ベトナム在住の中国人が一斉に帰国していく中、逆にベトナム入りした。「今後の仕事のために、自分の目で状況を確かめようと思って」

　デモが呼び掛けられたハノイの中国大使館前にも行ってみたが、ベトナム当局にデモが抑え込まれていたのを目の当たりにした。心配する家族らから早く帰るよう懇願され戻ってきたというが「危険な目に遭うこともなかったし、中国で報道されるほどひどい状況ではないと思う。落ち着いたらまたベトナムに行くよ」と笑顔を見せた。

　私と同様、男性も二〇一二年に中国で起きた反日デモを思い起こしていたようだ。「ようやく中国で反日デモに遭った日本人の気持ちが分かったよ」。冗談交じりに話す男性と、何だかとても分かり合えたような気になった。（佐藤大）