2014年07月25日
中国に抗議する大規模デモが予定されていた5月の休日、ホーチミンの都心全ての交差点に警官が立ち、緊張の度を増していた。朝9時、デモが呼び掛けられた場所では3人が立ち話するだけで警官が来て「解散しろ」。「これが集会の自由の制限か」と緊張した。
ところが、ほんの300メートルほど離れた、こぢんまりした公園のベンチでは、数組のアベックが熱く語らっている。警官は一瞥(いちべつ)しただけ。
午後、多くの学生グループがこの公園へ。デモかと身構えたが、所在なさげに、おしゃべりしたりスマートフォンをいじったり。警官は動かない。「ベトナムは本当はおおらかな国なのかな?」と思った。
「この国は娯楽が少ない。しかも毎日やたら暑い。だから、若者は、このように公園の日陰で休日の時間をつぶすんです。近場でじっとしているのが、金もかからず一番ですから」とベトナムをよく知る知人。
熱い仲や休日の楽しみを邪魔しない粋な警官かといえば、さにあらず。必要なこと以外は、無駄なことをせず、エネルギーを温存させることがこの国の知恵のようだ。(伊東誠)