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北京 誤報を笑えぬ緊迫感 

2014年07月27日

 「警察に捕まったというのは本当ですか?」。知り合いの他社の記者からこんな電話が次々とかかってきた。あるニュースサイトに、人権活動家を取材しようとしたところ、警察に阻まれ拘束されたという記事が私の実名入りで掲載されたからだ。

 実際は人権活動家の自宅に赴いたところ、警察官に身分証の提示を求められ「今日のところはお引き取りください」とやんわりと追い出されただけだ。人権問題や軍事施設の取材の際にはよくあるが、大騒ぎになったのは天安門事件が起きた6月4日の直前だったからだろう。

 人権活動家だけでなく日本メディアの中国人スタッフまで拘束されるなか「いよいよ日本人記者も拘束対象の例外ではなくなった」と思われたようだ。

 ただ、先日、香港で会った中国の人権活動家は「知り合いの活動家は次々と拘束されており、私も中国本土には帰れない」とこぼした。彼は年末にも米国の大学に留学し「しばらく海外で様子を見る」計画という。

 民主、人権問題に対する当局の締め付けは強まるばかり。今回の拘束騒ぎを笑い話と済ませられない雰囲気が今の中国にはある。 (新貝憲弘)