2014年07月29日
「口を滑らせると船が沈む」。ワシントンの連邦議会近くの豚肉業界のロビー団体、全米豚肉生産者協議会(NPPC)の事務所。壁には情報漏えいを戒める第二次世界大戦中のポスターが掲げられていた。
貿易部門担当のニコラス・ジョルダーノ副会長(57)は、日本の豚肉市場開放を求めて議会や政府に圧力をかけ、環太平洋連携協定(TPP)の行方を左右するともいわれている人物。会うと、のっけから米大リーグで活躍する日本人選手の名前を次々に列挙して、友好的な雰囲気を演出した。
が、いったんTPPに話題が移ると、すさまじい勢いで「日本は関税維持の要求を考え直せ」と自由貿易のメリットを語り始めた。それは極めて一面的な見方ではあるが、米国民が信じる自由な経済の一つの理想ではある。「それはおかしい」と日本の立場を踏まえて質問を挟んでも、最後はすべて同じ結論に。平行線というやつだ。
畜産業界の中でも最高の政治献金額を誇り、集票力もある。ポスターにあるように、まさに日本との「通商戦争」ということか。政治圧力の源泉を垣間見た。 (斉場保伸)