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ロンドン 戦場のフットボール

2014年08月07日

 ロンドンのチェルシー地区が開いた第1次世界大戦開戦100年の講演会に行った。戦場で兵士が蹴ったサッカーボールを復元展示していると聞いたからだ。チェルシーには戦前からプロチームがあり、ここからフランスの西部戦線に送られた連隊にもサッカーチームがあった。

 ボールの逸話は想像を超えていた。突撃の際にボールを蹴り、独軍の塹壕(ざんごう)にゴールしようとしたのだという。無謀な計画に気付いた司令官がボールに穴を開けた。だが、主将が1つだけ隠し持ち、突撃ラッパとともにキック。主将は銃弾で負傷したが、メンバーが続き、独軍塹壕の有刺鉄線にボールを蹴り込んだという。ボールにはその傷を縫い合わせた跡があった。

 当時は毒ガスが戦争で初めて使われ「蹴るためにガスマスクを目の上までまくり上げ、突撃したそうです」と関係者。

 英国はサッカー発祥の地。勇ましく語られる「戦場のフットボール」の陰で、突撃していった歩兵たちは塹壕から機関銃を浴び、犠牲者は4日間で5万人以上にのぼった。革が赤茶けてささくれたあのボールは、次の100年後も辛酸の記憶を呼び覚ますのだろう。(石川保典)

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