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キエフ 真の姿 見えない不幸

2014年08月12日

 「名前か? ベトナム人だ」

 男性は真顔で答えた後「ニックネームだよ」と笑った。

 ウクライナの首都キエフ中心部。反ロシアの極右グループの事務所前に「ベトナム人」は立っていた。「この通り、おれたちは銃なんてもってない。ファシストでもない。デマにだまされてはいけない」。知っている情報を冷静に説明する姿は、戦闘服さえ着ていなければ普通の会社員か何かだ。

 1週間後、親ロ派が勢力を保つ東部ドネツクの中心部で男子大学生に声をかけられた。

 「記者ですか」。親ロ派集団のボランティアだという彼は「われわれの考えを知ってほしいのです。人を紹介します」と言う。気弱そうな表情。きまじめな話しぶりは親ロ派の暴力的イメージにほど遠い。「活動が暴力に発展しないことを祈ってます」と彼はつけ加えた。

 互いに「ファシスト」「テロリスト」とののしり合い憎悪を高める2つのグループがある。「ベトナム人」や大学生だけでない。取材で出会うのは普通の人か、話せばどこかで共感できる人ばかりだ。そんな事実は希望より、今はむなしさをかき立てる。 (野村悦芳)

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