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ドイツ・アウクスブルク 500年変わらぬ家賃

2014年08月20日

 ドイツ南部アウクスブルクに「フッガライ」と呼ばれる世界最古の福祉住宅がある。1521年に豪商フッガー家が建て、貧しい市民を住まわせた。

 改築はされているが、今も現役の住居。お年寄りを中心に150人が住む。見学用のモデル住宅に入ると、世帯ごとに4畳半ほどの居間、寝室、台所、浴室という間取りだ。

 日本のワンルームマンションよりよほどゆったりしているが、年間家賃は0.88ユーロ(約120円)。月にすると10円だ。開設時に労働者の1週間分の賃金に当たる1ライングルデンを年間家賃と決めてから500年近く改定なし。貨幣価値の下落で超格安になった。運営財団の職員ザビーネ・ダリウスさん(57)は「今さら変えられないわね」と笑う。

 アパートが並ぶ敷地には観光客向けの資料室や土産物店が点在する。きょろきょろと歩いていたら、1階の窓辺にたたずむおばあさんと目が合った。ギクリとしたが、よく見ると、それは等身大の写真シール。観光客にさんざん家をのぞき込まれた住人が意趣返しに貼ったのだろう。タダ同然の代償は、やはりあるようだ。(宮本隆彦)