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ロンドン ファン遺伝子脈々と

2014年10月23日

 部屋の荷物が次々と段ボール箱に詰め込まれていく。英国での任期終了まで一カ月を切った8月上旬。ロンドン市内の自宅で手際良く作業を進めていた引っ越し業者の中年男性が突然、手を止めて口にした。「これに触るのはご免だな」

 あごで指した本棚には英プロサッカーの強豪クラブ、アーセナルの広報誌が。聞けば、男性は同じ北ロンドンに本拠を置くライバルクラブ、トットナムのファン。30年間もシーズンチケットを購入しているという。苦笑いで作業を再開してくれたが、思わぬ場所で筋金入りのファンに出くわした。

 この国のサッカー人気を語る時、必ずしも「選手が主役」とは言い切れない。大歓声で揺れる観客席に行けば分かる。試合はクラブと、それを支持するファン同士の誇りを懸けた勝負であり、選手が「代理」として戦っているようにも映る。

 そんなクラブが国内に無数に存在する。多くの場合、ファンは親から子へ受け継がれ、宿敵への対抗心を刷り込まれる。いずれは引退を迎える選手と違い、ファンは“生涯現役”。彼らの熱き思いがピッチに色濃く投影されている。(小杉敏之)

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