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米ニューアーク 家と安心 欲しいから

2014年09月27日

 2人の娘を持つアナさん(41)が中米エルサルバドルから米国に渡ってきたのは、何としても自分の家が欲しかったからだ。それから10年の月日が流れたが、米東部ニュージャージー州の町ニューアークで、身を粉にして働く毎日が続く。

 なぜ、自分の家が欲しかったのか。暴力を振るう夫から子供を連れて逃げ、2度、借家住まいをした。でも、いずれも卑劣な大家から関係を持つよう迫られ、何とか拒んだものの家を追い出された。思い出したくもない、嫌な経験だ。

 「家を持たないと、2人の娘も大きくなったときに同じような経験をする。たとえ貧乏でもそんな経験はしてほしくない。そう思ったから、どうしても自分の家を持ちたかったの」。アナさんは涙ぐんだ。

 当時、娘は3歳と5歳。年老いた母に預けて米国に渡った。だが、現実は甘くなかった。米国でなら簡単にお金を稼げると思っていたが、英語のできない移民の女性にできる仕事はそう多くない。今さら祖国にも戻れない。結局、英語は話せないまま、10年生きてきた。家を買えるようなお金は、今もたまっていない。(吉枝道生)