2014年10月10日
ニューヨークで、よく駅に向かって走る。ちらりと腕時計を見れば、既に発車時刻はすぎている。「だが…」と自信を持って駅に駆け込むと案の定、電車はまだ来ていない。
たまに電車が時刻表通りに来て乗り遅れ、ぼうぜんとすることがある。そもそも定時より早く来ることだってある。そんなときは、あきらめるしかない。
7年ぶりに日本に帰国した友人が、興奮した様子でメールを送ってきた。乗っていた電車が駅でいったん止まった後、停車位置を30センチほど直し、「大変ご迷惑をおかけしました」とアナウンスした-という。
もちろん、事故につながるかもしれないミスを減らす姿勢は素晴らしい。でも、それは本当に大変なご迷惑をおかけした-のだろうか。
先日、ニューヨーク市街地で駆け込んだ電車が、なかなか出発しなかった。10分ほどしてアナウンスがあり、「○○行きは×番線に変更になりました」と言ってのけた。数百人の乗客がぞろぞろと電車を降り、別のホームへと移動する。これこそ、大変なご迷惑。でも、アナウンスには、そんな言葉は含まれていなかった。 (吉枝道生)