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ベルリン 医師と旅芸人の人生

2014年10月17日

 第1次世界大戦が起きて100年の今年、大戦を振り返るさまざまな催しがベルリンである。日独センターでは、大戦中に敵国人としてドイツ当局に抑留された日本人について近著「『8月の砲声』を聞いた日本人」にまとめた京都大大学院法学研究科准教授の奈良岡聡智(そうち)さん(38)が講演した。

 当時、ドイツにいた日本人は600人ほど。大使館員や商社駐在員らのほか、医学や法学などを学ぶ留学生が大勢いた。こうしたトップエリートのほか、傘回しなどの芸で欧州を巡る旅芸人が30~40人もいた。

 西部デュッセルドルフに近いクレーフェルトでは、旅芸人で21歳の野田松次郎と、医師で留学生の植村尚清が別々に拘束され、2カ月余りを共に過ごした。5歳で祖国を離れた野田は日本語がつたなく、同房の外国人から「ドクトル」と呼ばれたインテリの植村が平仮名を教えたという。

 日本では交わることがなかった2人の人生が戦争によって遠く欧州で交錯した。「大勢が死に追いやられるように戦争は物事を平準化する。2人の出会いもその一例です」と奈良岡さんは話す。 (宮本隆彦)

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