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カイロ 国債好調の裏事情は

2014年10月15日

 エジプト政府がスエズ運河の拡張計画を発表した。完成は5年以内。観光客減少などで厳しい財政の中、航行する船を増やし、収入増加を目指す。

 新水路建設や現水路拡幅を予定し、工事費は600億エジプトポンド(8800億円)。費用調達のため、9月初旬に建設債が発行された。利率は年12%。国内の銀行の金利を上回る。

 発売初日だけで60億エジプトポンドの建設債が購入され、その後も順調に売れているようだ。経済ジャーナリストのヒシャーム・ムバラク氏は「高い利率が好調の一因。だが、それだけではない」と見る。

 現在、エジプトの西隣リビアでは、イスラム主義勢力と世俗派勢力が武力闘争を繰り広げる。直接の脅威ではないものの、シリアやリビアではイスラム教スンニ派の過激派組織「イスラム国」が台頭している。

 エジプト政府は「国のため」と、建設債購入を呼び掛けた。「周辺からの脅威が迫る中、愛国心の高まりが建設債購入の動機になっている」とムバラク氏。好調な建設費調達は、裏を返せばエジプト人が危機を感じている証拠とも言えそうだ。 (中村禎一郎)