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タリン KGB 消したい記憶

2014年10月14日

 曲がりくねった石畳の路地やそびえる教会の塔が中世に誘うかのようなエストニアの首都タリン。カフェや装飾品店はおしゃれな雰囲気を醸し出す。1991年に旧ソ連から独立。今はロシアと国境を接する欧州連合(EU)、北大西洋条約機構(NATO)の加盟国だ。

 街中では、ロシア語の看板など旧ソ連時代の面影を見ることはほとんどない。だが、観光ガイドに「KGB(国家保安委員会)博物館」を見つけた。旧ソ連の時代に秘密警察であるKGBのスパイらが市民の監視活動をしていた当時の史料を展示しているという。

 歴史的に意義深そうだが、乗り込んだタクシーの年配の運転手は「KGB? そんなのあったっけ?」。ガイドにある住所を示したが、車を走らせながら「ここかなあ」。結局、たどり着けなかった。エストニアにとってKGBは旧ソ連の抑圧の象徴であり、多くの人の苦い記憶に結び付いているという。

 帰り道、アニメ風のかわいい怪獣の看板を掲げた日本料理店の前を通り掛かった。店名は「スシモン」。KGBとは対照的に、クールジャパンはここでも健在だった。 (斉場保伸)