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ニューヨーク 熱戦舞台 汗も主役級

2014年10月27日

 錦織圭選手の活躍が注目されたテニスの全米オープン。選手が汗をぬぐうタオルが話題になっていると知ったのは準々決勝のころだった。

 論争の的は、プレーの合間にコートでボールを拾って選手に渡す「ボールパーソン」にタオルを持ってこさせる選手の態度だ。「汗臭いものを扱わせるのは差別的ではないか」という趣旨だった。

 錦織選手の場合、軽く手を上げるのが合図。確かに、目も合わせずに受け取り、放り投げるようにして返していた。

 観客はどう受け止めているのか。スタンドで10人ほどに聞いたが、問題視する人はゼロ。「テンポよく試合を進めるためだよ」とのこと。

 通勤電車で隣に座った男性にも尋ねてみた。すると「俺も気になってたんだ」と批判的な反応。向かいの席の親子連れも話に加わり議論に火が付いた。

 最も説得力があったのは、ジョコビッチ選手のファンという高校生。「汗は全力プレーの結晶でしょ。その選手の近くで試合の一部になれることを、ボールパーソンは誇りに思っているんだよ」。大人たちは返す言葉がなかった。 (北島忠輔)