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ベルリン 負の歴史忘れぬため

2014年11月13日

 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団が本拠地とするホール「フィルハーモニー」の隣に9月、長さ24メートルの透明な水色の壁が登場した。金色に輝くホールの外壁と好対照をなすこのモニュメントは、ナチスの負の歴史を記憶する慰霊碑だ。

 ドイツ民族の優秀性を唱えたナチスは、民族の血の劣化を防ぐとの思想に基づき、精神障害や遺伝病の患者を集めてガス室などで殺した。ホロコースト(ユダヤ人らの大量虐殺)の先駆けになった犯罪とされ、犠牲者は推定で30万人に上る。

 慰霊碑は、この犯罪の作戦本部があった「ティアガルテン通り4番地」に造られた。説明板によると、フィルハーモニーの大ホールは本部建物の跡地に位置する。これまで幾度となく足を運び、美しい調べに身を委ねてきたその場所に、こんな恐ろしい犯罪の歴史が刻まれていたとは知らなかった。

 ホロコースト関連の慰霊碑はこれまでもブランデンブルク門の近くや国会に当たる連邦議会の脇など市内の一等地に造られてきた。日常の中で目にすることも多い。そのたびに加害の事実を語り継ごうとの強い意志を感じる。(宮本隆彦)