2014年12月15日
買い物から自宅に戻ると、かばんに入れたはずの財布がない。人と接触した覚えはない。かばんに入れ損ねて落としたようだ。立ち寄った店や道中を捜したが、ない。すぐ、クレジットカードを使用停止にした。
日本料理店でやけ食いしようとした時、携帯電話が鳴った。聞き慣れない男性の声。タイ人店員に電話を代わってもらい、事情を説明してもらうと、財布を拾ったので届けたいという。財布にあった記者の名刺の携帯番号にかけてくれたのだ。
お互い顔も分からないから待ち合わせは至難の業。店員が「落とした人は困っている。店まで来てくれる?」と言うと「もちろん行くよ」。
拾い主が電話してくれること自体、驚いた。来てくれるのか半信半疑だった。だが、この男性はちゃんと店に現れた。「こんなこと、あるんですね」。私のみならず、店員全員も感激して彼を取り囲んだ。
失えば煩雑な手続きになる他のカード類なども無事だった。何度も礼を言うと、照れた顔で「一緒に写真に写ってくれないか?」。タイ人の写真好きに、この日ばかりは、笑顔を振りまいて応えた。 (伊東誠)