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独ロットワイル 排除せずに包み込む

2014年12月29日

 ドイツ南部ロットワイルに、トルコなどイスラム系移民のため、イスラムの教えにのっとった埋葬ができる墓地ができたと聞いて訪れた。

 イスラム教では遺体はひつぎに入れず布で巻いて葬るが、ドイツの規定ではひつぎに入れないと埋葬できない。ロットワイルは、地元の州がひつぎなしでもOKと規則を変更したことを受け、この秋、イスラム教徒の専用の墓地をつくった。

 十字架が並ぶキリスト教の墓地を通り抜けてたどり着いたその墓地にはまだ誰も葬られておらず、青い芝生が広がる。利用が進めば「町の統合を示す象徴」(市長)になるのだろう。イスラム系市民の社会への統合はドイツ全体の課題でもある。

 帰りがけに墓地の隣の遺跡に立ち寄ると、それはローマ時代の浴場跡だった。市内には別の浴場跡もあり3世紀まで公衆浴場として使われたという。ローマ人とドイツ人の先祖が仲良く湯に入ったのだろうか。ローマ帝国は異民族や他宗教を排除せずに包み込むことで「ローマの平和(パックス・ロマーナ)」を実現した。人間がやっていることは、昔も今もあまり変わらないようだ。(宮本隆彦)