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ブカレスト あれは革命だったか

2015年01月13日

 「1989年12月にルーマニアで起きた出来事は『革命』だったのでしょうか」。私の質問に、温厚な大学教授(51)の様子が急変した。

 「あの時、チャウシェスク大統領の消息や、その後に起きることは、誰にも分からなかった。私も路上の抗議運動に参加していたが、非常に危険だった」

 大統領派の発砲などで命を落とした市民は1100人に上る。「間違いなく『革命』だった」と語気を強める姿から、死んでいった仲間のためにも譲れないとの気迫が伝わった。

 ただ、私の疑問に根拠がないわけではない。変革後を担った救国戦線評議会のメンバーは独裁を支えた共産党員ばかり。官僚機構とともに旧体制が温存され、ルーマニアの根深い汚職体質の一因になったとは、教授自身が指摘していることだ。党内の反チャウシェスク派が自分たちの権力闘争に民衆の抗議運動を利用したとの見方もある。

 それにしても流血の変革から25年がたつのに、いまだに「汚職撲滅」が主要課題というこの国の現状は情けない。これでは自由と公正を求めて倒れた犠牲者が浮かばれないだろう。(宮本隆彦)