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米アレンタウン 親しき仲にもタブー

2015年01月18日

 思い出話に花を咲かせ、世の中を憂え、互いの冗談に笑う。でも「その話」には触れない。米ペンシルベニア州アレンタウンに住む幼なじみの家で、そんな一夜を過ごした。

 彼は、日本で育った肌の白い米国人。幼いころから、互いの家に出入りして兄弟のように育った。私が米国に赴任し、35年ぶりに再会していた。

 以前の会話で、気まずい思いに沈んだことがある。政治と人種問題について話していたときだ。米国では白人警官が黒人を死に至らしめる事件が続いた。「人種差別を許してはいけない」。そう合意できても、話が個別の話題に入ると、人種を背景に物の見方が分断され、会話がかみ合わない。白人の彼とアジア人の自分の間にどうしても埋まらない溝があり、これ以上話すと関係が険悪になると互いに気づき、黙り込んだ。

 それ以来「その話」には触れない。大事な話から逃げるのは間違っていると言われればその通り。でも、できなかった。いつも一緒にいた古い友達と、肌の色を背景にどうしても分かり合えないことがある。そんなこと、40年前は想像もしていなかった。 (吉枝道生)

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