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北京 無駄足ではなかった

2015年01月15日

 「久しぶりです。野靖環です。覚えていますか?」。突然の電話に戸惑ったが、次のひと言で記憶が戻った。「労働教養の件で取材を受けた者です」

 労働教養は司法手続きなしで長期間拘束される行政処分で、国内外の強い批判を受けて2013年末に廃止された。野さんは金融詐欺事件の賠償を求めて北京市政府などに陳情を重ねた結果、07年から08年まで労働教養処分を受けた。2年ほど前に取材した際、彼女は労働教養の体験記をまとめていた。本になり贈呈したいと連絡をくれたのだ。

 自費出版で二百数十ページにわたり、1年9カ月の体験をつづっている。出版社に持ち込んだが「敏感な問題なだけにどこも扱ってくれなかった」。制度は廃止されても野さんら「被害者」の賠償責任など問題は残されており、まだ大っぴらに語ることははばかられるからだ。

 それでも体験を機に中国の司法、人権問題の改善に向けて活動を続ける野さんの表情は2年前より明るく見えた。書名は「不虚此行(無駄足ではなかった)」。不当な拘束を決して無駄にしないという彼女の気概が感じられた。 (新貝憲弘)

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