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米ヘンプステッド 小さなアンソニーへ

2015年01月28日

 アンソニーは元気だろうか。米ニューヨーク州ヘンプステッドにある小さな競技場で、2部リーグに所属するひいきのサッカーチームを応援していると、彼のことを思い出す。

 3軒先に住んでいたアンソニーは、いつも「サッカーしよう」とボールを蹴りながら遊びに来た。決して豊かではなかったサンチェス一家はスペイン語しか話さず、英語が分かるのは小学校1年生の彼だけ。やがて、遠い街に引っ越していった。

 競技場に詰め掛けたサッカー少年たちの多くはユニホーム姿だ。背中に書いてある名前を見ていると、あることに気づく。リベラ、ガルシア、ロペス・・・。アンソニーと同じヒスパニック(中南米系)の子供たちだ。

 大リーグなどに比べ、入場料ははるかに安い。暮らしが楽ではない多くの中南米系住民にとって、2部リーグのサッカーは親子で楽しめる最高の娯楽の一つではないか。不法移民だって一緒に応援しているはずだ。

 試合が終わり、父親と手をつないだ少年たちが高揚した様子で真っ暗な道を歩いて帰る。一緒に歩きながら、彼らの明日が今日よりもよい日であるようにと、ふと祈る。 (吉枝道生)

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