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米フィラデルフィア 復活 ロッキーに重ね

2015年01月27日

 「疲れ切り負け犬と呼ばれた街とロッキーの姿が重なった。だから決意したロッキーが上り切ったこの階段が重要なんだ」。地元のジェイソン・フリードさん(34)は力説した。

 1976年公開の映画「ロッキー」シリーズのおかげで、米国有数のフィラデルフィア美術館よりも有名になってしまった美術館に向かう大階段だ。この日は閉館日。にもかかわらず、訪れた多くの人たちが一気に階段を駆け上り、老若男女関係なく最後に両手を突き上げる。

 ペンシルベニア州フィラデルフィアはワシントンに首都が移る1800年までの10年間首都で、独立宣言採択の舞台となった歴史を持つ。政治だけでなく衣服、造船を軸に米国経済を引っ張る存在でもあった。だが、20世紀末には長い不況と全米最悪といわれるほどの治安悪化のダメージに苦しんだ。

 製造業から情報通信やサービス業に転換する苦しみを経て、経済は復活。階段の上で楽しそうに仲間が語り合う姿を見ていて、気が付いたら階段を駆け上がっていた。目の前に広がったのは映画のあのシーンよりも、新しい高層ビルの棟数が増えた街の姿だった。 (斉場保伸)