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チュニス 信頼できぬ自国通貨

2015年01月26日

 アフリカ北部チュニジアの首都チュニスに大統領選取材のため出張した。中東の民主化運動「アラブの春」の後の混乱が続くアラブ諸国の中では比較的安定しており、大統領選も民主的な憲法にのっとって順調に実施された。タクシー運転手も「暴力で国を壊さない良い国民なんだ」と自慢げに話していた。

 取材を終え、支局のあるエジプトに帰国しようとしたときだった。

 財布に多くのチュニジア通貨(ディナール)が残っていることに気付いた。そこで、米ドルに替えようと両替所に足を運んだ。両替所で「交換したい」と言うと、答えは「ノー」。米ドルからチュニジア・ディナールへの両替は可能だが、逆には応じられないというのだ。

 レートが悪いだろうと覚悟していたが、両替できないとは思ってもみなかった。実は最近、安定を取り戻しつつあるように見えるエジプトでも、エジプト・ポンドから米ドルへの両替が難しいことを知った。

 自国の通貨を信じ切れない両国の人たち。エジプトはもちろんチュニジアも、いまだに安定化への道を探っている途中なのだと思い知らされた。 (中村禎一郎)