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米ハッケンサック むなしき偽りの国歌

2015年02月04日

 南米エクアドル出身のロサさんはメキシコ国歌が歌える。20年前、メキシコ国境から米国に密入国したとき、不法入国業者「コヨーテ」から覚えるように命じられた。「捕まってもメキシコ人だと言い張れば、隣のメキシコに追放されるだけ。エクアドルまで戻されると、また来るのは大変だからね」

 米東部ニュージャージー州ハッケンサックで4人の子どもを育てている。女性。おそらく40歳代。名字も年齢も教えてくれない。不法移民として当局の摘発におびえている。

 メキシコの言葉も覚えた。同じスペイン語を使う中南米でも、国によって語彙(ごい)や発音は違う。たとえば「メキシコではカバンはボルサって言うけど、エクアドルでは言わない」のだそうだ。捕まったらメキシコ風に話し、国歌を歌い、メキシコ人だと言い張れ。それがコヨーテの教えだった。

 でも「今思えば、そんなの無理なのよ。アクセントがまったく違うから」。実は、夫が一度捕まっている。メキシコ国歌の熱唱もむなしく、はるばるエクアドルまで送り返された。もちろん、また砂漠を越えて戻ってきたけれど。 (吉枝道生)

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