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プエルトリコ・サンフアン テロの犠牲忘れない

2015年02月23日

 カリブ海に浮かぶプエルトリコは米国の自治領だが、主要都市のサンフアンはスペイン植民地時代の古い街並みが続く。英語とスペイン語が公用語になってはいるものの、人々が日常使っているのはスペイン語だ。

 街はラテンの陽気にあふれる。石畳の路地に流れるラテン音楽のサルサに乗って、あちこちで人々が盛り上がっていた。

 ところが、そんなにぎやかさとは対照的に、厳かな空気が流れる場所がある。街の中心からやや離れた一角に立つホロコースト記念碑。自治政府と地元ユダヤ人社会が建立した。一帯は広場に整備され、記念碑の傍らには黒大理石のパネルもある。

 1972年5月に起きたテルアビブ空港乱射事件。日本赤軍の3人による無差別テロによって、26人が死亡し、約80人が負傷した。実は、死者のうち17人がプエルトリコ人だった。聖地巡礼に訪れたキリスト教徒で、パネルは犠牲者を悼む記念碑だ。

 日本ではすっかり風化した事件。だが、この一帯が整備されたのはわずか3年前のこと。ホロコースト記念碑には「知識は悪と戦う武器になる」と刻まれていた。(青木睦)