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北京 過敏すぎ?自主規制

2015年03月12日

 知り合いの中国人の人権活動家と久しぶりに会った。再会を喜びつつ近況を聞くと、ジョギングやサイクリングなどの運動を始めたという。

 当局に常時監視されている彼はしばしば自宅軟禁状態に置かれる。そうでなくてもネットで情報交換や意見を発信するのに熱心な彼は屋外で体を動かす機会が少ない。それだけに意識的に体を動かして健康を維持しようと思い立ったと話す。

 運動のこつを学ぼうとスポーツがテーマのネット交流会に参加しようとしたが、彼が当局の監視下にある「危険人物」と分かると、参加を断られたばかりか「交流会そのものも解散した」。彼はとばっちりを受けたくないという防衛反応に理解を示しつつも「趣味の話をしたかっただけなのに」と寂しそうに語った。

 中国で政治的な話題で相手の本音を聞くことは難しい。よほど親しいか信頼できる相手でない限り、政権批判でも日中関係でも、耳にするのは官製メディアが伝えるステレオタイプの意見ばかりだ。

 長年の政治闘争で身に付けた処世術だが、当局の圧力がなくても「自主規制」が働く現状に言いようのない悲しさを覚えた。 (新貝憲弘)