2015年04月08日
米国で映画を見ると、物語の筋とは別に、ほかの観客との一体感も楽しめる。面白ければ大声で笑うし、主人公があと一歩のところで敵に逃げられれば「オーマイゴッド」と悔しがる。スナックを食べるのにも気を使う日本とは対照的だ。
北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)第一書記の暗殺を題材にしたコメディー映画「ザ・インタビュー」を見た時もそうだった。テロ予告もあり緊張の中での観賞だった。それにもかかわらず、時に品のない演出もある話題作を客席の人たちは大いに楽しんでいた。
その映画で最も反応が大きかったのは、北朝鮮を独裁国家として大げさに描いた場面でも、金第一書記が暗殺された時でもなかった。
スパイを使って他国の政権を覆そうとする米国の戦略を北朝鮮の協力者が「いつもそうやって失敗してきたじゃないの」となじったシーン。そこでドッカーンと笑いが起きたが、私は反応が遅れた。
観客の男性が解説してくれた。「これは米国を風刺した映画なんだよ」。北朝鮮の描かれ方に気を取られていた私が、客席の一体感から取り残された理由がわかった。(北島忠輔)