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ソウル ナッツ姫たたく心理

2015年03月18日

 「真剣な反省をしているか疑問だ」と言い渡された懲役1年の実刑判決。大韓航空機内でナッツの出し方に腹を立て、機体を引き返させるなどした罪を問われた同社前副社長、趙顕娥(チョヒョナ)被告(40)はどう感じたのか。

 判決で語られたのは、韓国ドラマに登場する「悪役の財閥令嬢」そのままの振る舞い。「金と地位で人間の尊厳を崩壊させた」「事件は海外でも報じられ国家の威信を失墜させた」と判決は断罪した。韓国紙は「職員を奴隷のように思っていなければ発生しなかった事件だ」と指摘した一文を、こぞって取り上げていた。

 趙被告の行動は非難されて当然だろう。とはいえ、お笑い番組で顔を髪で隠すようにした趙被告に扮(ふん)したタレントがパロディーを演じたり、裁判所に向かう護送車内の姿まで報じられるなど、バッシングの高まりは異常で、趙被告の控訴で再び盛り上がった。

 その裏には「優遇された財閥3世の失墜を見てうっぷんを晴らす」という、ゆがんだ動機もあるように思う。非正規雇用の拡大などで格差が広がる韓国社会の「断絶の深さ」を思い、心が重くなった。(島崎諭生)