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タイ・ハジャイ ゾウの瞳に宿る憂い

2015年05月08日

 マレーシア国境から60キロにあるタイのハジャイ。人口16万人ほど。物価はバンコクの半値近くと安く、マレーシアからも人が押し寄せる。

 夜10時すぎ、ナイトマーケットを散策した。人の頭よりはるかに大きいドリアンを切って観光客を喜ばせている屋台を通り過ぎると、突然、子象が現れた。少年がバナナの入った袋を突き出し、えさ代を要求する。

 タイに赴任して1年半。街中で歩く象に初めて遭遇した。タイならどこでもゾウが歩いていると思われがちだが、自動車との衝突事故が多発、クラクションを鳴らすと、逆に車を襲うことがあり、バンコクでは2011年以降、法律で禁止された。国内でも、観光と保護用以外でほとんど見られない。

 子象はフラフープのような輪を鼻で回し、愛嬌(あいきょう)を振りまいたが、明らかにくたびれている。少年は10メートルほどつきまとってきたが、無理やり食べさせるようで、気が乗らず断った。

 突然、象は少年に耳を引っ張られ、車の陰へ。間もなく巡回中のパトカーが通り過ぎた。見つからなかったが、息を潜めるゾウの瞳は悲しみを帯びているように思えた。 (伊東誠)

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