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バンコク 僧侶とお経外せない

2015年05月25日

 タイの首都バンコクに進出した日系企業事務所の開所式に立ち会った。役員や来賓の長いあいさつがあるかと思ったら、主役は僧侶たち。「仏教式典」と呼ばれる行事で、オレンジのけさをまとった5人が会場に並んで座り、出席者を前に約1時間、朗々とお経をあげ続けた。

 式典を仕切ったイベント会社によると、タイでは事務所のほか工場の完成式などで、おなじみの光景という。必ず地元の僧侶を招いて来てもらい、会社がその地に根付いて繁栄することを願う。同時に、従業員の無病息災を祈る。

 日本でも社屋の起工式、落成式などで神主によるおはらいがよく行われるが、タイでは式典の重要度が高いようだ。イベント会社の社長は「式典をやらずにパーティーだけで済ませた日系の工場は、従業員から総すかんを食らっていました」と話していた。

 今回の事務所は都心の超高層ビルにあり、エレベーターの前では、並んでいた人たちがさっと空けて僧侶を通していた。僧侶たちも当然のように手を合わせて善意を受け取る。この国の底流にある仏教信仰のあつさが思われた。 (大橋洋一郎)