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ニューヨーク 「核廃絶」へ市民ら声

2015年06月06日

 ニューヨークの国連本部での核拡散防止条約(NPT)再検討会議に出席した長崎大2年、稲垣歩海さん(20)は「打ちのめされた」という。各国の外交官たちの情熱に、ではない。進まない議論に、である。

 オバマ米大統領がプラハで「核なき世界」を訴えたのは6年前。会議は核廃絶に向けた軍縮の現状と取り組みを話し合うことが目的だ。だが皮肉にも、会議に耳を傾けると、理想には程遠い現実を目の当たりにすることになる。

 核を持っていない国は「早く廃絶を」と迫る。核兵器を手放したくない保有国は「核弾頭は7万発から1万6000発に減った」と主張する。平行線なのだ。

 広島と長崎で何10万人もの命を奪ったのは、それぞれたった1発の核兵器。恐ろしい被害に比べ、歩みの鈍い交渉が被爆地から訪れた若者にはもどかしく映ったのだろう。

 原爆が人類に何をもたらすのかを語り継ぐ活動を紹介しようと出席した稲垣さん。「それでも核廃絶を訴え続ける市民団体のメンバーの姿に感動した。私も声を上げ続ける」。意欲を取り戻した様子を見て、ほっとした。(北島忠輔)